世界三秒前仮説

偶数日にしか投稿しない

「急いで帰るの寒いよね」

「そいつがわるさをしてるならそいつを倒そう」


マイスリーを飲んだ後、知らない間に出来上がっていた。
頭が働いているときにはなかなか書けないことばだと思った。
意識を外に飛ばしたら、自分のなかからこんな文章が出てくるんだ。
わるさをしているそいつって、誰なんだろうね。


いつもはマイスリーは飲まない。ハルシオン0.25mgとセロクエル25mgで、大抵の夜は眠れる。でも、本当に眠れない夜に、黄色い5mgを半分に割って飲むのだ。
眠れるかわりに心の奥底がさらけ出されて、朝起きてそれを目の当たりにすると、何だか情けないような、少し救われたような気持ちになる。

ハルシオンを飲んだ後も、いつも前向性健忘が起こる。朝の4時台にはよく覚えのないツイートが投稿されていて、起きてから驚くのだ。
それは、文章にもなっていないアルファベットの羅列であったり、わたしの悲しみだったり、寂しさだったり、疑問だったりする。アルファベットの羅列も、何か言いたいことがあったのだろう。でも、嬉しいこと、楽しいことが書いてあった試しがない。人って、「思考」がないと「正の感情」を知覚することができないのかもしれない。
正気。正常な心。確かな意識。異常のない精神状態。本当に? ポジティブな感情のほうが異常なんじゃないの。

誰か他の人間に嫌な絡み方をするよりはいいだろう、と思うが、無意識下で連絡できるような相手がいなくて、0と1の世界にただひとりごとを放り投げることを選んでいるのは、悲しいような、それでいいような。

大好きで大好きで仕方ないものを肌身離さず持ち歩いてたら、いつのまにか失くしちゃった。

扉が閉じる音は聞こえなかった。ノラはまだ、そこにいる。

何ならできるの?
ええと、意味のないことばを書き連ねることなら、多少は。


「何か、何か変えなければいけない、自分が壊れてしまう」
そう思って咄嗟に、「私」から「わたし」と書くようになった。
「私」と書くことはなくなった。
その時点で、文章の上でしか自分がないのだと、今気づいた。
「私」は今までどこに居たのだろう、「私」は今どこに行ったのだろう
「私」が「私」であり続けるために、わたしはわたしに形をかえたのだ
そうでもしなかったら、消えてなくなってしまっていただろうから
一人称なんてなんでもいいよ。興味ない そんなこと、どうでもいい
はたから見たら何も変わっていないんだから
もちろん、わたしから見たって何も変わっちゃいない
何をやっているんだろうね

2週間後に巨大な彗星が落ちてきて、この世界は終わるらしい。
人ひとりも、文明も、何も残されることなく滅亡するらしい。
世界中のえらいひとたちが死力を尽くしても、崩壊は止められないらしい。
そんなの、とっても素敵だ。
だから私は、好きな人に会いに行くことにした。
どうせみんな消えてしまうんだから、いまさら何があったって怖くない。
そう決意した夜に空を見上げると、一等星より輝くひとつの星が見えた。
あれが、この世界を滅ぼす彗星なんだって。星が綺麗だと、初めて思った。
10日以上も猶予をくれるなんて、優しいお星さまだね。
二人は幸せなキスをして終了。私でも、そんな物語の主人公になれるんだ。
明日は学校に行ったあと、とびきり可愛い、私に似合う服を見繕って、メイク道具を新調して、好きな人に会う準備をするんだ。
そうしたらきっと、きみも私のこと、もう一度好きって言ってくれるはずだから。
なんて、きみとの関係はもうこの世界の命運よりも手遅れで終わっていることをわかっていなかった時が、いちばん幸せだったんだね。
こんな世界、はやく終わっちゃえばいいのに。